世界的にも災害が多い国、日本。そんな日本で起こる気象災害には、どんなものがあるのでしょうか。
災害には地震、台風、火山噴火など様々な種類があります。どの災害に対しても防災は必要ですが、災害の特性に応じた事前の準備、知識があるとより安心ですね。中でも今回は天候変化による災害である「気象災害」について、詳しく解説していきます。
気象災害とは
気象災害とは気象現象、つまり「天候の変化」によって起こる災害のこと。
天候の変化は、大きく分けると2種類の見方があり、ひとつは大雨による洪水や大雪による雪害などのような「天気の影響で直接的に起きるもの」です。そして、もうひとつは強風と豪雨による台風災害、少雨と強い日射による干害のように「色々な要素が組み合わさって起きるもの」とに分かれます。
気象災害に影響を与える天候
気象災害に影響を与える天候は、大雨や大雪のような目に見える悪天候ばかりではありません。以下のような現状も気象災害となり得る可能性があるのです。
風、雨、雪、低気温、高気温、雷、霜、霧、高潮
これらの天候が異常に強くなったり、組み合わさったりすると気象災害として被害が生じてきます。
気象災害の種類
気象災害には様々なものがあります。
大雨害
雨による災害を大雨害といいます。雨の量や強さが一定の強さを超えると、災害が発生します。大まかな目安としては、一度に降る量が1年間雨量の10%程度を超えると大雨。それぞれが住んでいる地域によってその程度は違ってきますが、およそ100~300mm程度といわれています。大雨の原因としては、たくさんの水蒸気が急速に水滴に変わることがあげられます。水蒸気を水滴に変える働きをするのは上昇気流。そこに水蒸気が多量に含まれると,強い雨になります.つまり,強い「上昇気流」と周りからの「水蒸気」の組み合わせが,大雨の発生条件です。大気が不安定なときに発生する局地的な大雨「ゲリラ豪雨」や同じ場所で積乱雲が次々発生する大雨「集中豪雨」で長時間の大雨が続くと、洪水が起きることも。河川が溢れる洪水を外水氾濫といい、市街地の雨水の排水が間に合わず起きる洪水を内水氾濫といいます。
雪害
大雪によって生じる災害の事を雪害といいます。大雪とは大雪注意報基準以上の雪のことで、数日以上にわたる降雪により社会に大きな影響をもたらす雪のことを言います。雪害の代表的ものとして、雪崩、除雪中の転落事故、路面凍結による交通事故や歩行中の転倒事故など、豪雪地帯以外でも発生する災害もあります。また、対人のみならず大雪により農作物や交通機関が損害を受ける場合もあります。
風害
風によって引き起こされる災害全般のことを風害といいます。風速が15m以上の風のことを「強い風」といい、台風や熱帯性低気圧に伴う強風、積乱雲の下で上昇気流を伴い発生する猛烈な突風のことを「竜巻」といいます。風害には雨を伴うことが多く、風害と水害の被害を分けることは難しいため合わせて風水害とすることも多いようです。被害としては、突風や暴風による屋根瓦などの飛散や、倒木、飛来物による建物や人体への被害も。また農作物への影響も大きく、日本国内では風害の主原因となる台風が、リンゴやナシなどの収穫前の時期と重なり、甚大な被害を生じます。
落雷害
落雷により生じる被害のことを落雷害といいます。落雷とは雲と雲、雲と地上との間の放電によって,光と音を発生する自然現象のこと。落雷は直接受ける直撃雷によるものと、電界や磁界の変化によって配電線や通信線などに生じる誘電雷によるものがあります。人的な被害はもちろんのこと、建物の火災や農作物の被害にもつながることがあります。
雹害(ひょうがい)
雹(ひょう)が降ってくることにより農作物が被害を受けることをいいます。北関東、甲信越、東北の地域において、夏の初めや秋の午後の時間帯に多いといわれています。雹は上昇気流を持つ積乱雲の中で発生するため、雷と同時に起きることが多いようです。だんだんと表面が凍り、粒が大きくなるにつれて重さも増していきます。
冷害(れいがい)
夏に低温な気候が続くことにより農作物が被害を受けることをいいます。日本でも冷害が多いのが北海道と東北地方。冷たい北東の風が強い時、梅雨明けが遅れ気温が上がらない時などに発生します。また、エルニーニョ現象(後に説明)などが原因となる異常気象、火山噴火により大気中に留まる火山灰が増え、日照量の減少することによっても発生します。
高潮(たかしお)
台風など発達した低気圧が海岸を通るときに起きる海面の高まりのことをいいます。
海の波が沖から盛り上がって、海岸や沿岸まで押し寄せる現象で、低い地域では浸水などの被害が生じます。ちなみに地震によって起きる海面の高まりは津波で、高潮とは起きる仕組みが異なります。
気象災害の過去の事例を季節ごとに紹介!
このように、天気は季節ごとに変わるため、色々な気象災害が起きる可能性があるのです。
実際に私たちの国日本では、台風や洪水などといった気象災害が毎年数多く発生しています。そのため、「できるだけ被害を抑えるためにはどうしたらいいか」「災害が起きたときにどんな行動を取るべきなのか」という、災害対策はとても重要な問題です。
そこで、災害時にどんな対策をとればいいかを知るために、過去に実際に発生した災害状況を知っていきましょう。
春の気象災害「低気圧発達による暴風雨」
まずは、春に多い暴風雨被害から紹介します。最近では、平成24年に発生した暴風雨が大きな被害を及ぼしました。
・発生日時
平成24年4月3日~5日にかけて
・概要
中国の華北で発生した低気圧は急速に発達しながら日本海を東北東に進みました。また、この低気圧からのびる寒冷前線が西日本から北日本を通過してオホーツク海に達しました。
これにより西日本から北日本の広い範囲で記録的な暴風となり、海上では大しけとなりました。また、前線の通過に伴い局地的に非常に激しい雨が降りました。
・被害状況
観測した風速は、和歌山県和歌山市友ケ島で期間最大の32.2メートルになるなど、暴風の目安となる風速20 メートルを超えた観測地点数は927地点のうち78地点に達しました。
瞬間風速では、新潟県佐渡市両津で43.5 メートルを観測。
夏の気象災害「梅雨前線活発化による大雨」
・発生日時
平成22年7月10日~16日にかけて
・概要
本州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から非常に湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発となりました。これにより、西日本から東日本にかけて大雨となりました。
・被害状況
この大雨により広島県・島根県・岐阜県において死者・行方不明者が14名の犠牲者がでました。また、九州北部地方、中国地方、東海地方などを中心に各地で浸水害や土砂災害が発生。その他、停電、断水が発生し、交通機関にも影響が出ました。
秋の気象災害「台風による被害」
・発生日時
令和元年10月10日~13日にかけて
・概要
10 月6 日に南鳥島近海で発生した台風第19 号は、西に進み一時 大型で猛烈な台風に発達しました。その後、少しずつ進路を北に変えて、日本の南を北上し、12 日に強い勢力で伊豆半島に上陸。台風第19 号の接近・通過に伴い、広い範囲で大雨、暴風、高波、高潮となりました。
・被害状況
広い範囲で河川の氾濫が起き、土砂災害や浸水害が発生。また、人的被害や住家被害、電気・水道・道路・鉄道施設などのライフラインへの被害も発生しました。
冬の気象災害「大雪による被害」
・発生日時
平成30年2月3日~8日にかけて
・概要
日本付近は、2月3日から8日にかけて強い冬型の気圧配置が続き、上空には強い寒気が流れ込み続けました。この影響により、北日本から西日本の日本海側を中心に断続的に雪が降り、北陸地方を中心に大雪となりました。特に、福井県福井市では、昭和56年(1981年)の豪雪以来の記録的な大雪でした。
・被害状況
福井県や石川県で多数の車両の立ち往生が発生するなど、西日本から北日本にかけて道路の通行止め、鉄道の運休、航空機・船舶の欠航等の交通障害が発生。また、除雪作業中の事故も多発しました。
このように、日本では春夏秋冬すべての季節で、様々な災害が発生しています。特に、雨や雪が多い時期は、大きな災害に発展する可能性もありますので、天気予報を細目にチェックし、天候が悪そうなときには、外出を控えるなどしていきましょう。
過ごしやすい季節が気象災害になった例も!
一方、穏やかに思える季節や気温が災害に発展するケースもあります。例えば、雨が少ない少雨や、暑さが抑えられる冷夏など。
このゆな気象も「異常災害」に分類され、以下のような影響を及ぼします。
少雨による影響
・発生日時
平成6年4月~11月にかけて
・概要
北海道~九州地方では春以来の少雨により水不足が深刻化し、給水制限や断水を行った都道府県は40に及びました。特に北九州では翌年の1995年5月末まで時間給水が続きました。農作物被害は、関東地方、中国地方、四国地方、九州地方を中心として、果樹、野菜、稲、飼肥料作物、雑穀、豆類等に発生。畜産業も家畜が暑さのために死んだり衰弱するなどの被害が46道府県に及びました。
冷夏による影響
・発生日時
平成15年4月~9月にかけて
・概要
4月から8月にかけて九州地方~関東甲信地方を中心に日照不足の傾向が発生。また、6月下旬から7月末にかけてと8月中旬を中心に北日本~西日本で顕著な低温が続きました。
この低温・日照不足により北海道、東北地方太平洋側~東海地方を中心に稲、雑穀・豆類、野菜、果樹などの農作物に大きな被害が発生しました。
気象災害が起こる可能性大の現象とは?
日本や東南アジアの気象に影響を及ぼす現象として「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」があります。両方とも日本から遠く離れた地域での現象ですが、これらが発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
エルニーニョ現象
エルニーニョ現象とは、南米ペルー沖の海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります。日本付近では、夏に気温が低く日照時間が少なくなり、冷夏が発生しやすくなります。冬は西高東低の冬型の気圧配置が弱まり、気温が高くなり暖冬になりやすくなります。
ラニーニャ現象
南ペルー沖の海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、数年おきに発生します。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲が盛んに発生します。日本付近では、夏に太平洋高気圧が北に張り出し気温が高くなる傾向にあります。冬は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向にあります。
まとめ
今回は天候変化による災害「気象災害」について、その種類について詳しく解説しました。日々天候には変化があり、日本では多くの気象災害が起きています。
災害に備えるためには、こうした気象を理解しておくことも大切です。ひとつの気象がどのように変化しておくのかを知れば、事前に備えをしておくことができるようになります。
今回確認した知識とともに、防災グッズ等事前の準備も行い災害に備えていきましょう。